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インプラントになるはずだった歯を保存できるか挑戦した症例
2026年7月23日
「この歯は抜歯ですね。」
そう診断される歯の中には、本当に抜歯しか方法がない歯もあります。しかし、中には最後まで確認してみる価値がある歯も存在します。
今回は、まさにそのような症例をご紹介します。
歯根破折が疑われました
上顎小臼歯の歯肉のできものを主訴に来院されました。
- 根管内の根尖側約1/2に頬舌方向の破折線
- 頬側骨の欠損
- 根尖部の透過像
が認められました。
これらの所見から、歯根破折(垂直性歯根破折)が強く疑われる状態でした。
歯根破折が確認された場合、一般的には保存は難しく、抜歯が第一選択となります。そのため、当初は抜歯後にインプラント治療を予定していました。
抜歯後に予想外の結果が…
しかし、実際に抜歯して歯根全体を丁寧に観察すると、
歯根表面に明らかな破折線は確認できませんでした。
拡大視野下でも慎重に確認しましたが、歯根破折を示す所見は認められません。
つまり、
CTや歯の内部の観察では破折が疑われたものの、実際には抜歯してしまうほどの破折ではない可能性
が出てきたのです。
その場で治療方針を変更
歯を保存できる可能性があると判断し、
予定していたインプラント治療を中止。
その代わりに、
- 歯根端切除
- 逆根管形成
- MTAによる逆根管充填
- 意図的再植(歯を元の位置へ戻す処置)
を行いました。
予定していた治療とは異なる方法でしたが、患者さん自身の歯を残せる可能性を優先した判断です。
CTやマイクロスコープだけでは診断が難しいこともあります
CTやマイクロスコープは歯科診療に欠かせない検査ですが、
- 金属の影響(アーチファクト)
- 破折様の画像
- 解剖学的な重なり
- マイクロスコープでは歯根の内部はある程度確認できるが、歯根表面は見られない
などにより、抜歯が必要な歯根破折かどうか、といった確定診断は困難です。
だからこそ、画像・症状・実際の歯の状態を総合的に判断することが重要です。
現在は経過観察中です
今回の症例は現在、治癒経過を慎重に観察している段階です。
この歯が長期的に保存できるかどうかは、今後の経過を見守る必要があります。
しかし、「インプラントしかない」と思われた歯でも、状況によっては保存できる可能性があることを改めて実感した症例でした。
当院の考え方
当院では、「残せる可能性がある歯」は最後まで検討することを大切にしています。
もちろん、無理に歯を残すことが正解とは限りません。
しかし、今回のように状況を慎重に判断することで、患者さんご自身の歯を守れる可能性があるのであれば、その選択肢も一緒に考えていきたいと思っています。
執筆者
プロフィール
伊藤 崇史Takafumi Ito
ほまれ歯科医院 院長
当院では、「的確な診断」→「しっかりとした説明」→「拡大視野下における精密治療」→「むし歯・歯周病の再発の予防」といった流れで患者さんごとのニーズに合わせた診療を行なっております。
- 【経歴】
- 2011年3月新潟大学歯学部 卒業 2011年~2012年新潟大学医歯学総合病院・歯科総合診療部 2012年~2016年新潟大学医歯学総合研究科・う蝕顎分野 2015年~2016年新潟大学医歯学総合病院
- 医療連携口腔管理チーム 歯内療法担当
- 【所属】
- 日本審美歯科学会
- 日本顕微鏡歯科学会






